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いなべん(田舎弁護士) みのる弁護士法律事務所  「的外れ 2014年8月号より」

2018.01.17

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○昔話ができる特権

 

 先日、共に司法試験を目指して勉強した仲間と約50年振りに会うことができました。彼がいなければ、私は司法試験に合格することはできませんでした。私は彼のお陰で、彼の方が実力は上でしたが、彼より先に合格することができました。酒を酌み交わし、50年ほど前の昔話に花が咲きました。彼の話では、「先に合格した者達が、私には是非合格してもらわなければならないということで、連れ込み旅館の一室を借りて一緒に勉強してくれた。学生服を着た男達が、何人も白昼連れ込み旅館に出入りしていたので、旅館の主人をはじめ、周りから変な目で見られた」と言って大笑いとなりました。その中に私も居たと言って、彼は感謝の言葉を申し述べてくれました。私の方こそ「彼のお陰で合格できた」との思いで一杯でした。彼が陸軍中将の孫であることを、今回初めて知りました。大いに話が弾み、彼は最終の東北新幹線に乗り遅れそうになるほどでした。

50年も昔の友人です。まさに「オールド・フレンド」(古きよき友)です。このオールド・フレンドと共に思い出話をする機会は、長生きしなければ得られません。昔話に笑い、そして涙するのは、老人の特権です。

○老人の特権をフルに使うためのコツ

 

「人生において一番楽しいのは、人との関わり合いの中にある」と述べました。それは生まれてから死ぬまでの間、いつでも同じであろうと思います。その意味では、特に「長生き」と関わりがあるというわけではありません。ですが「孫」と「オールド・フレンド」は、長生きした者の特権です。このような特権を与えられた高齢者としては、この特権をフルに使わなければ損です。この特権をフルに使うことは、長生きを楽しむコツの一つです。

高齢者となって医療費が安くなるという特権は、高齢者となれば誰でも無意識のうちに、月に何回も使っています。病院に行くたびに「国民健康保険高齢受給者証」を出せば、その特権は一律に活かされます。気持ちの持ち方も、特別なコツも不要です。

ですが、「孫」や「オールド・フレンド」と楽しい時間を共有するという特権は、使う者の意識によって、心の持ち方によって、その中身は変わってきます。孫と接する時には、「孫とこのような時間を持てるのは、長生きしたお陰だ」という思いと、「この年になったら、いつまでもこういう時間は続かないかもしれない」という一期一会の思いで、孫との時間を楽しむことが大事です。確かに孫はうるさく長い時間お相手をするのは体力的にきついこともあります。うるさくて「何とかならないか」と思うこともあります。しかし「孫と一緒にいられるということは、長生きしたお陰だ」という思いで、長生きに対して感謝することが「⻑⽣きを楽しむコツ」だと思います。

オールド・フレンドと会って 「あの頃はああだった、こうだった」と言い合えるのは、お互いに長生きしているからこそです。昔話は「知音」、つまり、互いをよく知った友がいなければできません。オールド・フレンドと昔話ができるということは、自分も相手も長生きができているからこそです。

高齢者が2人で昔話を楽しめば、喜びは二乗倍になり、「⻑⽣きの楽しみの⼆重奏」」となります。3人集まれば「三重奏」、4人集まれば「四重奏」となり、盛り上がります。同級会や同窓会となれば、楽しみの「オーケストラ」となります。しんみりと昔話を楽しみたい時は、中国の故事に倣って2人だけでなら琴の音を楽しむような時間もまた格別です。私は、オーケストラよりも琴の音の方が好きです。じっくりと知音と語り合う時間が好きです。先日のオールド・フレンドとの一席は、彼と私と妻の3人だけでしたが、話が盛り上がり、心に深く刻み込まれました。いい時間でした。

 

~つづく~

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