そのカリウム制限、本当に必要なの?

2021.04.13

腎臓病
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慢性腎臓病の場合、気を付けてくださいといわれる「カリウム」

『腎臓病の食事療法=カリウム制限』が重要!と考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、これは大きな間違いです。腎機能が低下したからといって、全ての人が一律にカリウム制限をするべきというわけではないのです。「カリウム」はなぜ制限が必要なのか、自分はカリウム制限が必要な状態にあるのか、などを考えてみましょう。

 

カリウムとは

 

体内に存在するカリウム(K)は、ほとんどが細胞内に存在します。細胞の浸透圧を維持、血圧の調整、神経や筋肉などの興奮性細胞の機能に大きな影響を与えている重要なミネラルです。カリウムは低値でも高値でも体に影響を与えます。基準値は3.5~5.0mEq/Lとなります。

 

 

なぜカリウム制限が必要か

 

腎機能が正常であれば余分なカリウムは尿から排泄され、体内で基準値内に調整がされます。

しかし、腎機能が低下していると、余分なカリウムは尿から排泄できず血中に戻り、『高カリウム血症』となってしまいます。

高カリウム血症とは6.0mEq/L以上の状態のことです。症状としては手足のしびれ、筋肉の麻痺や脱力感などがあり、高値のまま放置すると不整脈や心停止を引き起こすことがあるため、食事や薬を飲むことで調整します。

 

 

そのカリウム制限、本当に必要?

 

「慢性腎臓病と診断された」「腎機能が低下していると指摘された」ことで、初めに『腎臓病食事療法=カリウム制限』を積極的に行おうとする方がいらっしゃいますが、本当にカリウム制限は必要なのでしょうか?

 

勘違いをしている場合も多いのですが、カリウムそのものは腎臓に直接的な悪影響を与えません。

高カリウム血症になると重篤な不整脈を引き起こす恐れがあるため、カリウムを制限するのです。

 

 

カリウム制限の開始時期目安

 

血清カリウム値が高い場合(5.0mEq/L以上)や、慢性腎臓病のステージがG3b以上、透析中など進行してしまっている場合は高カリウム血症を予防するために、カリウム制限が必要です。

しかし、ステージが進行していない場合や、血中カリウム値に異常がなければ、一律に厳しく制限する必要はないのです。

腎臓病のステージG1~G2では高カリウム血症のリスクが少ないため、カリウム制限をする必要はなく、日本人の食事摂取基準2020年版で策定されている目標量(男性3,000mg/日以上、女性2,600mg/日以上)を目安としましょう。また、腎臓病の進行状態を見ながら、定期的な血液検査でカリウム制限をするのか緩めるのか等調整することをお勧めします。

 

カリウム制限の開始時期POINT

・CKDステージG3b以降 (eGFR44以下が目安)

→G3bで2,000mg/日以下、G4~G5で1,500 mg/日以下

・人工透析を行っている

・高カリウム状態(血清カリウム値5.0mEq/L以上)

 

 

カリウムは一律に制限しない

 

というのも、カリウムはあらゆる食品に含まれる栄養素です。特に野菜や果物などあらゆるビタミン・ミネラル・食物繊維が含まれる食品に多く含まれています。

そのため、一律に野菜の茹でこぼし・水さらし・食品制限などのカリウム制限を行うことで、食べられる食品の幅が非常に少なくなり、食事療法のストレスも増え、栄養も偏ります。また、カリウムは血圧の調整なども行うミネラル源であるため、本当に必要な場合のみ制限を行う方が望ましいのです。

医療機関等でも腎臓病のステージや血清カリウム値の状態に関係なく、一律にカリウム制限をするようにと指示をされることもあります。その際は一度主治医に確認をお勧めします。

 

また、カリウム制限が本来必要でない状態のときに過度な制限を続けることは、「低カリウム血症」につながります。低カリウム血症になると、脱力感や食欲不振、下痢・嘔吐を引き起こし、重度の場合、不整脈や筋肉麻痺の状態となる可能性があります。

 

腎臓に直接的に影響を与えるのは「塩分」「タンパク質」。まずは、この2つの栄養を調整した食事療法を行うことが腎機能の維持や回復につながります。

 

 

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情報提供元:メディカルフードサービス 管理栄養士

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