腎臓病・透析中にリン制限はなぜ必要?
2019.09.12
腎臓病の方でも「リン」について詳しく知っているという方は少ないのではないでしょうか。
今回はその「リン」についてです。リンは殆どが腎臓から排泄されるため、腎機能が低下していると体内(血液中)にリンが溜まりやすくなります。
現在リンが高値である方は、Cr(クレアチニン)が高値であれば、腎臓由来でP(リン)が高値になっているといえるでしょう。それでは、なぜ腎機能が低下していたり、透析をしていると「リン」の制限が必要なのでしょうか。リンについて解説していきます。
リン制限はなぜ必要なの?
特に透析患者さんは高リン血症があると、血管壁や軟骨、心臓弁、肺、皮膚など骨以外の組織にカルシウムの沈着をきたす「異所性石灰化」を発症しやすいといわれています。
異所性石灰化を発症すると骨粗鬆症のように骨がもろくなるだけでなく、動脈硬化を生じて、心不全、不整脈、心筋梗塞や脳梗塞の原因となり死亡リスクが高くなり危険です。これを予防するためにも腎臓病、特に透析を行っている方はリンに注意する必要があります。
この血清リンが5.0mg/dl以上の場合、高リン血症となります。これが7.0mg/dl以上、あるいは4.0mg/dl未満でも死亡リスクが高いと報告がされています。
リンの役割
リンは、体内ではどのようなはたらきをしているのでしょうか。
腎臓病の食事療法を行っているとどうしても「リン」は体に悪いものだと考えてしまいますが、リンは体内のミネラルの中でカルシウムに次いで多い栄養素なのです。
はたらきとしては、
・カルシウム・マグネシウムとともに、歯や骨をつくる
・筋肉、脳、神経などの組織でエネルギーを作り出すときに使われる
というようなはたらきをしており、体には必要な栄養素です。
リンの1日摂取量~リンはどれくらい摂っていいの?~
リンは多くの食品に含まれており、通常の食事では不足や欠乏することはないと考えられています。そのため、健康な方でも不足や欠乏を気にするのではなく、過剰摂取に注意が必要な栄養素なのです。
それではリンの1日摂取量を確認していきましょう。『健康な方の目安とする量』と『腎臓病の食事療法より定められた基準』をそれぞれ紹介します。
●リンの食事摂取基準 (健康な方の目安)
成人男性:目安量 1000mg/日
耐用上限量 3000mg/日
成人女性:目安量 800mg/日
耐用上限量 3000mg/日
※食事摂取基準2020年版より
●腎臓病ステージによる「リン」の基準
腎臓病食事療法基準では、透析(血液透析・腹膜透析)を行っている方のみ基準が定められています。
・血液透析(週3回)・腹膜透析・・・たんぱく質(g)×15=リン(mg/日)
※慢性腎臓病に対する食事療法基準 2014 年版より
食品に含まれるタンパク質とリンには相関関係があり、このような式が用いられています。例えば1日のたんぱく質が50gと決まっている方は「50(g)×15=750mg/日」となり、1日のリンの摂取量を750mg以下にしましょうということになります。
さて、リンについての理解は深まりましたか?腎機能が低下していると、血清リン値も上がりやすい状態です。しっかりと制限を行っていきましょう。
▼「リン制限」のお食事をお探しの場合はタンパク制限食
情報提供元:メディカルフードサービス 管理栄養士