濃すぎる「とろみ」はかえって危険?とろみ剤の使い方
2019.12.18
インフルエンザと同様、冬に患者が増える『誤嚥性肺炎』とそれを予防するための『とろみ』のあれこれについて紹介します。風邪やインフルエンザなどで体力を消耗すると、それとともに嚥下能力も低下し、風邪をひいている間に誤嚥性肺炎を併発ということが多いようです。注意しましょう。
■ 水は最も誤嚥リスクが高い
「摂食嚥下障害者はスプーン一杯の水で溺れる」という言葉が示す通り、飲料は最も誤嚥リスクが高い食品です。
水はあらゆる食品の中で最も流動性が高く、飲み込もうとしたときに素早くのどに流れます。
嚥下機能が低下していると一瞬息を止める嚥下運動のタイミングに合わず、気管内に水が浸入する「誤嚥」が起こります。そのため、水にとろみをつけて半固形化することで、のどを流れるスピードをゆるやかにし、誤嚥を防ぎます。
■ 片栗粉ではダメ?とろみ剤の必要性
ちなみにとろみをつける際には「とろみ調整食品」を使用します。
片栗粉を使えばいいのでは?とも思ってしまいますが、誤嚥を防ぐには片栗粉のとろみでは不十分です。
例えば、あんかけ。作りたての状態では丁度良いとろみの状態になっています。しかし、冷めると水っぽくなっていたなんていう経験はないでしょうか。また、片栗粉は口の中にいれると唾液に含まれるアミラーゼ(消化酵素)によって分解されサラサラの状態になってしまいます。
この状態はとろみが必要な方にとっては非常に危険です。これらのことから、片栗粉ではなく「とろみ調整食品」の使用が勧められるのです。
■ とろみの濃さ
とろみ剤を使う理由が分かったところで、「とろみ」の種類についても分類していきましょう。とろみは各々濃さがあります。対象者の摂食嚥下機能によって、「薄いとろみ・中間のとろみ・濃いとろみ」を使い分ける必要があり、とろみ剤の量によって調整することができます。
ではさっそくとろみの強さによる違いをみてみましょう。
薄いとろみ
・ストローで簡単に吸うことができる
・フォークの歯の間から素早く流れ落ちる
中間のとろみ
・フォークの歯の間からゆっくりと流れ落ちる
・ストローで吸うのは抵抗がある
濃いとろみ
・フォークの歯の間から流れ出ない
・ストローで吸うことは困難
薄いとろみは中間のとろみほどのとろみがなくても誤嚥しない程度の方を対象にしています。一方、濃いとろみは重度の嚥下障害の方を対象にしています。
濃いとろみをつくる際、とろみ調整食品の種類によっては、べたつきが強くなり、かえって飲み込みしにくくなることがあります。とろみは濃ければ濃いほど良いというわけではなくその人にあった濃さを選択することが大切です。
■ とろみの付け方
とろみは主材料が同じ商品では差は少ないですが、商品によって、とろみの付き具合やとろみ剤を入れる量が異なります。
とろみ剤は独自の判断で濃さを選択するのではなく、薄いとろみ・中間のとろみ・濃いとろみのどれが自分には適切かを医師や言語聴覚士に確認しましょう。そして、パッケージに記載のある量で使用しましょう。確認ができない間は、中間のとろみで調整しましょう。
また、とろみ剤は飲料との相性があります。水やお茶などはすぐにとろみがつき、時間が経ってもとろみの濃さはほぼ一定です。しかし、味噌汁などの塩分が多い飲料、牛乳などの乳製品、ジュースなど不純物が入っている飲み物はとろみがつきにくいです。よく溶けるように十分混ぜながら、10分程度時間を置き、状態を確認しましょう。とろみがつかないからといって粉を追加していると、かたいとろみになってしまいます。時間を置き確認することが大切です。
とろみの作り方
1)とろみ剤をコップに入れてから、飲み物を注ぐ
粉を先にコップに入れておいた方が混ざりが良くなります。
3)泡だて器でかき混ぜる
冷たい飲み物などは混ざりが悪いため、よく混ざるようにスプーンよりも泡だて器を使った方がとろみ完成までの時間を短くできます。
4)少し時間を置いて(5分~10分)とろみを確認する
とろみ作りに慣れていない方はとろみの付き具合を試飲してみましょう。思ったよりもとろみがついていた、ついていなかった、なんて発見があるかもしれません。
■ 便利なとろみ付き飲料の作り置き
日頃からとろみ付き飲料が必要な方は、その都度準備するのが大変ではないでしょうか。そこでペットボトルに水ととろみ剤を入れて振りながら混ぜ合わせ、冷蔵庫で保管しながら作り置きすると便利です!ただ、衛生面を考慮し作ったらその日のうちに使い切りましょう。
さて、どうだったでしょうか。「とろみ」についての理解は深まりましたか。適切に使って誤嚥を予防しましょう。
情報提供元:メディカルフードサービス 管理栄養士